主な適応疾患

下垂体腫瘍


疾患の概要

下垂体腫瘍(下垂体腺腫)は臨床病理学的に機能性腺腫と非機能性腺腫に分けられる。
機能性腺腫の主なものとして成長ホルモン産生腺腫(末端肥大症)、副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫(クッシング病)、プロラクチン産生腺腫がある。


治療目的・治療方法・治療効果

下垂体腫瘍の治療には手術摘出、ガンマナイフなどの定位放射線治療、従来の放射線治療、特定のものに対しては薬物治療がある。それらのいずれか、もしくは併用療法が行われる。
腫瘍が大きい場合、腫瘍により周囲の視神経などが圧迫されていたりして早期の圧迫解除が必要な場合、また、異常に産生されているホルモン高値による症状を早急に是正する必要がある場合は、手術摘出がまず行われる。近年は内視鏡による経鼻手術が安全に効果的に行われるようになっている。
しかしながら、腫瘍が大きく側方進展し海綿静脈洞内に進展したりしている場合などは腫瘍摘出が不充分に終わる場合も多い。そういった場合、以前は従来の通常の放射線治療が追加治療として、腫瘍の増殖抑制と過剰ホルモン分泌抑制の目的で行われていた。しかし、その効果発現までには時間がかかり、しかも、長期的には、重篤な副作用がおこる可能性がある。かえって下垂体ホルモン低下をきたし たり、間脳下垂体機能低下、知能・記憶障害、視機能障害などをきたす場合がある。
残存腫瘍が大きくなく限局している場合で、視神経と密着していなければ(視神経は放射線障害に弱く副作用を起こしやすい)ガンマナイフなどの定位放射線治療での治療が有効である。特にガンマナイフではMRIで腫瘍を細かく描出し下垂体腺腫だけをねらって大量の放射線を正確に集中させることができる。副作用も極めて少ないことが示されてきている。
薬物治療としては、成長ホルモン産生腺腫(末端肥大症)に対するサンドスタチン治療、プロラクチン産生腺腫に対するパーロデル治療がある。特にプロラクチン産生腺腫に対するパーロデル治療は高い効果が期待できるので初期治療として行なわれる場合が多い。
副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫(クッシング病)ではホルモン過剰による症状が早期に現れ、腫瘍が小さい段階(微小腺腫)で見つかることもあり、その場合、初回治療としてガンマナイフ治療が有効に行える場合がある。このほか、腫瘍の再発の場合は、腺腫が大きくなってしまわないうちに再発が診断されれば、ガンマナイフなどの定位放射線治療で有効に対処できる場合が多い。
非機能下垂体腺腫では、ホルモンは過剰産生されていないので、腫瘍による視神経などの周囲の正常構造の圧迫解除が治療目的となる。腫瘍が見つかった段階で、もうすでに腫瘍が非常に大きくなってしまっていることが多く、その場合、まずは、経鼻の内視鏡手術、また、開頭手術による腫瘍摘出が行われることが多い。
その後に残存している腫瘍や再発腫瘍が大きくなく限局している場合で、視神経と密着していなければ(視神経は放射線障害の副作用を起こしやすい)、やはり、ガンマナイフなどの定位放射線治療での治療が残存・再発腫瘍の腫瘍増殖抑制のために有効である。


問題点など

腫瘍が大きく視神経の圧迫による視障害が逼迫している時などは、早急な減圧のために手術切除が必要である。
ただし、プロラクチノーマではパーロデルの内服により反応をみてもよい。手術摘出する場合は、後でガンマナイフ治療を安全に行うことができるように、視神経周囲の腫瘍をできるだけきれいに除去しておく配慮がなされるとよい。


症例1 非機能性下垂体腺腫 30代男性

非機能性(過剰なホルモン分泌がないもの)の下垂体腺腫が、本来、下垂体がおさまっているトルコ鞍から上方に盛り上がって発育し、上方の視神経を圧迫。両目の視野欠損の原因となっていた(左)。
これに対して、圧迫されている視神経の早急な減圧のために、まず摘出手術(経蝶形骨洞手術)が行われたが、手術後に腫瘍残存があり、腫瘍が、また増大してくる前に、残存腫瘍に対してガンマナイフ治療を行った(中央)。
腫瘍に合わせて辺縁線量14Gyを照射した。1年後のMRIでガンマナイフ治療した腫瘍は著明に縮小している(右)。
ガンマナイフでは、このようにターゲットとする腫瘍と視神経との間に、わずかな隙間があれば、視神経に放射線をあまり当てずに、腫瘍のみに高線量を正確に照射できるので、特にトルコ鞍部の下垂体腫瘍を安全に非常に効果的に治療できる。

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症例2 クッシング病・ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)産生下垂体腺腫 10代女性

小さいが過剰なACTHを産生してクッシング病の原因となっている下垂体腫瘍(上段の左右)をガンマナイフ治療した。
辺縁線量50.4Gyで照射治療した。治療した腫瘍は8ヶ月後ころより縮小し、血中ホルモンも正常化し、肥満などの身体症状も改善した。6年後のMRIでも腫瘍は消失している(下段の左右)。
ガンマナイフにより、このような径5mm程度の小さい腫瘍も、正確に高線量を照射して治療することができる。

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症例3 末端肥大症・GH(成長ホルモン)産生下垂体腺腫 40代女性

末端肥大症(手・足が大きくなるなどの症状)や高血圧、糖尿病をおこすGHを過剰分泌している下垂体腫瘍(左)をガンマナイフ治療した。
4年後頃までに腫瘍は著明に縮小した(中央)。
それに伴い血中ホルモンの分泌も下降した。7年後のMRIでも腫瘍は消失したままである(右)。
ガンマナイフでは腫瘍の上方に位置する視神経を避けて、腫瘍のみを正確に照射治療できる。

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症例4 プロラクチン産生下垂体腺腫 40代男性

プロラクチン(男性の場合、性欲減退などの症状の原因となる)を過剰産生している下垂体腫瘍(左)に対して,当初パーロデル内服による薬物治療が行われた。
それにより、腫瘍は、かなり縮小し、上方の視神経の圧迫も解除されたが、腫瘍残存があり(中央)、ガンマナイフ治療を行った。
それにより腫瘍は縮小、4年後のMRIでも腫瘍は消失している。

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監修: 森 美雅(名古屋市立大学医学部附属病院 放射線科)