一般社団法人日本ガンマナイフ学会

The Japanese Leksell Gamma Knife Society-JLGK

主な適応疾患 髄膜腫

  1. HOME

  2. 主な適応疾患 髄膜腫

疾患の概要

髄膜腫は、脳腫瘍と言っても脳そのものではなく脳を包んでいる硬膜という膜から発生する腫瘍です。
しかし、頭蓋内にあって大きくなると脳を圧迫したり、脳神経、血管などを巻き込んで脳の症状を出してくるため脳腫瘍の一つとされ、その代表例でもあります。
基本的には良性の腫瘍ですので、通常はゆっくりとしか大きくならず、正しい表現では無いかもしれませんが、頭蓋内に出来るイボのようなものと考えて頂くと解りやすいかもしれません。
髄膜腫は頭蓋内でいろいろな場所に出来、かなり大きくならないと症状が出ないこともありますが、場所によっては小さなうちから手足や顔面がしびれたり、ものが見えにくくなったり、二重に見えるようになったり、また視野が欠けたり、耳が聞こえにくくなる等の症状が出る場合もあり、痙攣発作の原因となることもあります。

治療目的

この腫瘍は良性であるため、すべてを取り除くあるいは完全に消失せしめ得なくとも、これ以上増大させないこと、また今ある症状を改善して、これ以上悪化させないことが治療の目的になります。

治療方法

外科的摘出手術をはじめいくつかの治療法がありますが、その一つであるガンマナイフは、コバルト60から出るガンマ線を利用した定位的放射線治療の一種で、非常に高い精度で頭蓋内のあらゆる場所の病変を治療することが出来る大変すぐれた治療法です。

治療効果

このガンマナイフ治療により、髄膜腫に於いては長期的に見てもおおむね 90% 以上の率で腫瘍を制御することが出来るとされており、正しい適応をすれば副作用の率も低く十分な効果を得ることが出来ます。

問題点とまとめ

しかし、適応は基本的には 3cm 以内の大きさに限られ、場所によっては放射線による副作用で脳神経障害を来す可能性が高く、適応外となることもあります。
よって、手術摘出が困難な比較的小さな髄膜腫が基本的には良い適応となりますが、大きなものや手術で何らかの合併症を来したり、後遺症を残す可能性がある場合等に、無理をせずあえて腫瘍を部分的に残し、あとからその残した部分にガンマナイフ治療を行い腫瘍を制御するという方法もとられます。

既に述べたように通常の髄膜腫は良性の腫瘍ですので、きちんとした丁寧な手術で完全に取り除いてしまえば、後遺症も来すことなくほぼ治癒させることが出来ます。
よって、治療の原則は外科的に全摘出すると言うことになりますが、後遺症を全く残さずに完全に摘出することは難しい場合も多々あります。
従って、腫瘍の出来ている場所、大きさ、出ている症状や患者さんの年齢、体力などを考えながら、長期的視野を展望に、外科的摘出手術とともにガンマナイフなどの定位的放射線治療を単独あるいは組み合わせて、治療をいつどのタイミングでどのように行うのか、それぞれの患者さん一人一人で個別に考えてゆくのが、髄膜腫の一般的な治療戦略と言えます。
その中で、治療精度や効果が高く侵襲の低いガンマナイフの担う役割は今後ますます拡がっていくものと思われます。

ガンマナイフ治療により良好なコントロールが得られた髄膜腫の1例

  • 治療前

  • 治療後11ケ月

  • 治療後27ケ月

  • 治療後95ケ月

監修: 祁内 博行(永冨脳神経外科病院 脳神経外科)